『タスキメシ』(額賀澪)について
この本は、第62回青少年読書感想文全国コンクール高等学校部門課題図書です。
なので、やはり早くて中学生、主に高校生向けの本です。
『タスキメシ』というタイトルからわかるように、駅伝と料理にまつわる本です。
ですが、駅伝で走っているシーンはそれほど多くなく、むしろ料理を作りながら心の葛藤を描いているような場面が多いので、小学生には難しくなってしまいます。
さらに、構成も大学に入ってからの箱根駅伝のシーンを織り交ぜながら、高校3年のときの眞家早馬、井坂都、眞家春馬、助川亮介と語りが変わるので、やはり小学生には難しい本となってしまいます。
スポーツを志す高校生にはぜひ読んでもらいたい作品です。
眞家早馬と眞家春馬は1つ違いの兄弟です。2人とも陸上長距離選手ですが、兄の早馬は高校2年の秋に剥離骨折で手術をし、走れなくなってしまいました。リハビリをすれば、3年最後の駅伝大会には出れるかもしれないのですが、弟の偏食を治そうと料理研究部の井坂都に料理を教わり、リハビリをする様子はありません。それどころか、管理栄養士になろうと考え始めました。そんな早馬に、弟や他の陸上選手たちは陸上の世界へ戻ってもらいたいと考えます。
(このあとの詳しいあらすじを読みたい方は一番最後に。ネタバレになりますので、読みたくない方はご覧にならないでください。)
『タスキメシ』(額賀澪)が中学受験で出題された学校
2017年度本郷中学校の国語の入試問題
大問3番で、「1、去る者」から「カブと手羽元の煮物〜眞家春馬〜」より単行本で約13ページちょっと出題されました。かなり長いです。さらに、とても難しい場面でした。
兄の早馬が料理を習っている井坂都のところに弟の春馬が会いに行き、話をしているうちに、兄の早馬がやってきて、春馬は教卓の下に隠れ、都と早馬の話を聞いてしまう場面です。この小説の中でも、弟の春馬が兄早馬の思いを聞いてしまう、クライマックスに近いシーンです。
大問1番は漢字の読み書き、大問2番は説明文で大問3番まででした。
この大問3番の設問形式は、適語補充が1問、4択の記号選択問題が8問、40字の記述問題が1問で全部で10問でした。
あらすじ(ネタバレ)
井坂都は料理研究部で1人で料理を続けていた。担任の田中稔先生のはからいで、眞家早馬が都の料理を手伝うことになり、そこから都に料理を教わりたいとお願いする。弟春馬の偏食を治したいという思いや、陸上をしない時間を料理に没頭することで穴埋めしたいという思いで、料理を続け、早馬は管理栄養士になろうと考え始める。
しかし、春馬だけでなく、陸上部同期で部長の助川亮介、強豪校で一度早馬と一緒に走り負けた藤宮藤一郎も早馬の復活を願っている。
春馬は早馬が都に、ケガをしたことで陸上をやめる口実ができて良かったと、弟に負けるのが怖いのだという思いを吐露しているところを聞いてしまう。
都は都で幼なじみの助川亮介が早馬が戻ってこないことに悩んでいるのを見て、早馬を陸上に戻すように亮介にけしかける。
亮介は高校3年最後の駅伝大会茨城県予選で優勝して早馬を陸上の世界に引きずり戻すと宣言し、春馬と走る。
そして、強豪校を破り優勝した亮介と春馬は、早馬に思いを告げに行く。
早馬はケガのせいで陸上推薦ももらえなかったため、自力で勉強して日農大の受験に合格し、もう一度箱根駅伝の夢を追い、陸上を続けることにする。しかし、いつ再発するかわからない右膝と付き合いながら練習を続け、結果箱根駅伝に出場する選手には選ばれなかった。大学は違うが、高校時代の助川、藤宮、春馬が走る箱根駅伝で、早馬は給水係としてともに走り、走り続けた4年間に悔いはなかった。