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『遠くの声に耳を澄ませて』(宮下奈都)について
12編の短編集ですが、1つの話の登場人物が他の話にも出てくるという関係性があります。2度読みして確認したくなる短編集です。
大人が読むには、前向きになれる本当に素敵な本ですが、小学生には厳しいです。
しかし、「アンデスの声」が東洋英和女学院中で出題されました。一生を農業に尽くしたおじいちゃんと孫娘のお話ですが、孫娘はもう社会人になっています。頑強なおじいちゃんが80近くになって、倒れて入院したとき、小さい頃に聞いた話の謎が明かされます。
『遠くの声に耳を澄ませて』が中学受験で出題された学校
2017年度東洋英和女学院中学部A日程の国語の入試問題で「アンデスの声」から出題されました。
2017年度東洋英和女学院中学部A日程の国語の入試問題
「アンデスの声」は文庫で全文19ページありますが、そのうち約14.5ページ分出題されました。設問が問20まであり、この「アンデスの声」のみからの出題です。
設問形式は、漢字の読み書きが1問、語句の意味が1問、4択の記号選択問題が11問、抜き出しが3問、適語補充問題が3問、字数制限つき記述問題が1問、自由記述の問題が3問でした。
本文を全部読むだけでも、時間がかかります。それなのに、試験時間が45分です。一読でどこまで理解できるかにかかっています。何度か読み直すことができればわかるかもしれませんが、一読で大部分がわかっていないと、全ての設問を解き切ることができないでしょう。相当の国語力が要求されている問題です。
東洋英和女学院中学部の国語の出題傾向
2017年、2018年と続けて、小説のみからの出題で、2018年は伊藤整の『少年』からの出題です。戦前の小学校が舞台なので、時代的にも理解が難しいです。どちらも量が多く、試験時間45分で解くには、かなりきつい問題です。
そのためか、4択の記号選択問題は、明らかにおかしいと思える選択肢が入っていて、消し込みは難しくありません。ただ、本文の内容が読み取れていての話なので、そもそも本文の内容がわからないと、他の問題で点を取ることもできず、全滅状態になりかねないでしょう。
自由記述の問題は、しっかり状況が把握できて、その上で気持ちが理解できていないと書くことができないので、下手すると何も書けないということもありえるでしょう。
普段から、難しい小説を読みこなせるように、読書量が必要です。日本文学や、少し大人向けの小説にも挑戦しておく必要があるでしょう。