『未来の手紙』(椰月美智子)について
この本は、
- しいちゃん
- 忘れない夏
- 未来の息子
- 未来の手紙
- 月島さんちのフミちゃん
- イモリのしっぽ
6編の短編集です。ちょっと変わったお話もあります。
受験で出題されたのは「しいちゃん」です。「忘れない夏」は塾のテキストに掲載されています。
ですので、出題されそうなのは「しいちゃん」「忘れない夏」「未来の手紙」の3編でしょう。簡単に読めるので、この3編だけ読んでみてもいいでしょう。
(この3編の詳しいあらすじを読みたい方は一番最後に。ネタバレになりますので、読みたくない方はご覧にならないでください。)
「未来の息子」では中学2年生の理子が学校でこっくりさんをやったのがきっかけで、自分の未来の息子が小さな生き物のように目の前に現れたり、「月島さんちのフミちゃん」では頭の後ろに口がもう一つできてしまう瑛子ちゃんが出てきたりと、かなり奇妙なお話です。
ただ、そこは気にしなくても、全体としては心温まる物語となっていますので、余力のある生徒さんはこちらも読んでみましょう。
椰月美智子さんの作品は、下記の記事の「しずかな日々」がおすすめです。

『未来の手紙』が中学受験で出題された学校
2015年度横浜共立学園中学校A方式の国語の入試問題で出題されました。
2015年度横浜共立学園中学校の国語の入試問題
大問2番で「しいちゃん」から後半単行本で約7ページ分出題されました。悪口は伝染するので止めないといけないということを祖母のしいちゃんがたとえ話を使って、のりえに話す場面です。
大問1番は漢字の読み書き、大問3番は論説文で、大問3番まででした。
この大問2番の設問形式は、適語補充が1問、語句の意味が1問、10字の記述が1問、抜き出しが2問、5択の記号選択問題が3問、自由記述が2問、文法の問題が1問で全部で11問でした。
あらすじ(ネタバレ)
しいちゃん
しいちゃんは12歳ののりえのおばあちゃんだが、51歳でまだまだ若い。のりえは学校でのできごとをしいちゃんに聞いてもらいたくてしいちゃんの家に行く。のりえは学校でトイレに1人で行ったとき、中から、仲がいいわけではないけれど友だちだと思っていた子たちに、のりえちゃんはすましてる、自分だけ特別だと思ってるなどと言われているのを聞いてしまい、そのトイレに入れなくなってしまったのだ。そのことをのりえは仲のいい友だちに話したら、友だちも同調してくれたが、気分が悪いままだった。しいちゃんは悪口は伝染するという例え話をのりえに話す。そして、のりえは悪口は自分で止めなければならないとわかる。
忘れない夏
望月ヤマトは、中学2年生で家の都合で転校しなければならなくなった。ヤマトは野球部でピッチャー、親友のユウキはキャッチャーで、最高のバッテリーだった。中3でヤマトはキャプテンになり、ユウキは副キャプテンでいっしょに優勝を目指すつもりだったのに… ユウキは野球を続けろとヤマトに言う。お互いに優勝を目指そうと。
未来の手紙
沼田瑠衣斗は、小学5年生になってから、いじめられるようになった。そして、瑠衣斗は未来のことだけを考えるようにした。楽しく輝く未来を想像し、1年ごとの目標を1ヶ月に一度手紙に書き、自分宛にポストに投函した。32歳までの20年間、20通の手紙を小学校時代に書き終え、1年ごとに手紙を開封して、その内容通りに生きていくと決心した。手紙の目標通りに生き、瑠衣斗は自動車設計士となった。33歳になったとき、もう未来の手紙はないはずだった。ところがまた、自分宛に悪夢の手紙が届く。これまでのように順調にはいかないと。それは、6年生のときに母親に頼んで33歳になったら投函するように言ってあったものだった。それを思い出した瑠衣斗は、悪夢の手紙の裏面を見る。未来の手紙がなくても大丈夫だと、端に小さく書いてあったのだ。