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『終わらない歌』(宮下奈都)について
『よろこびの歌』の3年後を描いた続編です。御木元玲はやはり音大に進学し一人暮らしを始めます。原千夏はミュージカル女優を目指して劇団に所属し、バイトしながら練習に励んでいます。他の高校時代の友人たちも描かれながら、最後は、玲が千夏の劇団のオーディションに挑戦することになります。
『よろこびの歌』に続いて、若さあふれるパワー感じる小説となっています。いつの間にかミュージカルの世界にどんどん引き込まれていきます。
2作続けて多くの人に読んでもらいたい作品です。
小学生にとってはまた世代が上のものになってしまい、ちょっと難しいです。他の高校時代の友人たちが大学に入ったあとどうなったかということも書かれていて、その部分は小学生には理解しがたいところも多いと思うので、入試で出題された最終章、最も勢いのある章だけ読んでみるというのもいいでしょう。
(詳しいあらすじを読みたい方は一番最後に。ネタバレになりますので、読みたくない方はご覧にならないでください。)

『終わらない歌』が中学受験で出題された学校
2014年度第1回東京都市大学付属中学校の国語の入試問題で出題されました。
2014年度第1回東京都市大学付属中学校の国語の入試問題
大問2番でこの『終わらない歌』が出題されました。他、大問1番は論説文、大問3番は詩、大問4番は漢字でした。問題量は多いですが、全体で記述問題はありませんでした。
『終わらない歌』は6章から成り立っていて、その最終章「終わらない歌」の前半から、原千夏が御木元玲に自分の劇団の若手公演のオーディションに出るように勧めるシーンが出ました。文庫で10.5ページ分が大問2番です。
この大問2番の問題形式は、語句の問題が2問記号選択で、他7問全て4択の記号選択問題でした。
東京都市大学付属中学校の国語の出題傾向
東京都市大学付属中学校の国語の入試問題は、ここ数年、説明的文章が1題、物語的文章が1題、詩または詩+和歌や俳句が1題、漢字の成り立ちや部首などが1題の構成となっています。
第1回の試験では、今のところ記述問題はないのですが、第2回の試験で、70字や80字の記述問題が1問は出題されています。
詩・和歌・俳句が出題されるのも特徴で、直喩・隠喩などの表現技法や、季語も出題されています。
漢字の成り立ちや部首が出題されるのも珍しいので、東京都市大学付属中学校を受験される方は、過去問で必ず確認しておきましょう。
『終わらない歌』あらすじ(ネタバレ)
御木元玲は声楽を志して音大に入学する。母の勧めで大学近くのマンションに一人暮らしをするようになった。母には頑張ると言って出たものの、大学1クラスの中で自分の地位は7〜10番くらいではないかと思っている。このくらいで歌っていけるのか、歌を歌う情熱が湧いてこないと。原千夏はミュージカル劇団に属し、バイトをいくつも掛け持ちしながら、歌やダンスのレッスンを受けている。
東条あやが短大を卒業して北陸の眼鏡を作る会社に就職したため、お別れ兼ねてのクラス会が開かれる。そこで、みんなの近況報告会となる。中学でソフトボールでエースだったが肩を壊してできなくなった中溝早希は、大学の運動科学部に進んだ。クラス委員だった佐々木ひかりは保育士を目指して短大から四大へ行くことに。里中佳子は、高校の古典の教師にずっと片思いをしていてふられたとか。東条あやがなぜ北陸の会社に就職したかもその後の章で語られる。
千夏はあるオーディションに落ち、劇団の指導者に育ちが良すぎる、もっと貪欲にならないとと注意される。そして、次の劇団の若手公演で千夏は2人のメインキャストのうちの1つをもらえることになる。ところが、そこにもう1人劇団員ではない歌が歌える人が必要だというのだ。そのもう1人に、千夏は玲を推薦する。玲に劇団のオーディションを受けるように話すが、玲が目指しているものはオペラであってミュージカルではなかった。しかし、千夏の話に促され、オーディションを受けることにする。玲は劇団指導者に気に入られ、千夏と同じ舞台に立つことになる。玲は歌以外のレッスンを受けたことがないので、ダンスのレッスンは厳しかったが、歌える喜びをひしひしと感じながら、自分は歌い続けていくことを確信する。