『ロバのサイン会』(吉野万里子)について
この本は、
- 女優のプライド
→女優ネコのリリアン - 波乗り5秒前
→バンドウイルカのミント - おれ害獣
→シカのサンカク - うまれないタマゴ
→イグアナのネムリン - お値段100万円
→ティーカッププードルのココア - アゲハひとりぼっち
→ジャコウアゲハのお菊ちゃん - 青い羽ねむる
→セキセイインコのパピプー - ロバのサイン会
→ロバのウサウマ
の8つの動物たちの物語です。(→語り手です。)
ウサウマというロバが山田ADと旅する番組がテレビで人気になります。旅するロバのウサウマが出会った動物たちということで、このウサウマが各物語で少しずつ登場します。
猫のリリアンはテレビに出る女優ネコで、リリアンが住んでいる社長の家には、他にたくさんのタレント動物たちが一緒に住んでいます。イグアナのノタリンとネムリン、インコのパピプー、も自分の物語の他にも出場し、それぞれの物語に少しずつ関係があったりします。
この物語の動物たちは、みんな人間の言葉が本当は分かっているんだという前提で書かれていて、人間に可愛がられたり、守られたり、愚痴をこぼされたりしながら、都合のいい人間たちの世界が描かれています。
とはいえ、嫌味なところはなく、さりげなく愛や生きること、人間と動物の死生観の違いなどを教えられ、ほろっとしたり、ほっこりしたり、素敵な作品です。
「うまれないタマゴ」「アゲハひとりぼっち」は小学生にはちょっとピンとこないかもしれません。小学生には少し難しいところもありますが、他の物語はぜひ読んでもらいたい作品です。
『ロバのサイン会』が中学受験で出題された学校
2017年度麻布中学校の国語の入試問題で出題されました。
2017年度麻布中学校の国語の入試問題
この『ロバのサイン会』の「おれ害獣」からのみの出題です。「おれ害獣」の単行本で後半21ページ分少し省略されながら出題されました。「シカは人間にとって害獣となるのに、奈良公園のシカは天然記念物です。シカのサンカクとマルは冬の飢えから逃れるために、奈良公園にたどり着きますが、サンカクは害獣を選択します。」という場面です。
設問形式は、13問(1問に2つの設問がある問いが1問)の設問のうち、漢字が1問、4択の記号選択問題が2問、抜き出しが1問、残り10問は全て自由記述の問題です。設問最後の13番は、自由記述問題で解答用紙の行が5行分用意されていました。本文全体を捉えてしっかり書けなければならないでしょう。